トランペット高音域への科学的アプローチ実験

実験結果まとめ

実験結果

 トランペット演奏へのの3つのステップのうちの最初のステップ1「物理的に音を出す」レベルではあるが、現在たどり着いた「ローE~ダブルハイF~」の4オクターブ以上(高音方向はほぼ無限ではないかと思える)振動する口の形は「図 実験結果-1」の通り。
 実験は、高音域以上はほぼ検証できたと考えているが、中低音域まで繋がる広い音域を確保する下唇の使い方を検証中に、実験を中止した。中低音域は、音は出るが、スムーズに高音域以上に繋がるところまでの検証はできなかった。
中止せざるを得なかった理由は「終わりに」に後述する。

実験結果1
図 実験結果-1

注)ここでの高音・低音は明確な区分けではなく高音方向・低音方向という意味で使っている。
 口の形として記載したが、重要なことは「この形」ではなく、マウスピース内の唇の合わせ目を上下に移動させやすい形ということ。筋肉運動の主な目的はこの上下移動である。そして、全音域を通じて息がスムーズに通る事、高音だと圧力は高い、が重要だと思っている。そして、低音から超高音まで、その音程に位置するように唇や舌や腕が動くように癖が付けばコントロール可能になると思う。

(詳細)

  • ・少ない息の流量で振動しやすいように、上下唇共柔らかい部分が接するように外向きにし、マウスピースの位置はかなりの部分を上唇にかける。(付録b 2.口元のアップ参照)
  • ・両唇を閉じるが、息がスーッと出ていく場所として中央部分は特に軽く閉じる。むしろ、積極的に上唇の中央部分を持ち上げる。
  • ・外向きにした下唇にマウスピースを垂直方向で上から乗せ、下唇を支える筋肉がマウスピースを保持するようにする。下唇をどの程度出っ張らせればベストなのかは探索中。
  • ・低音では下唇を厚めに、高音では下唇を薄めに上唇は寄せて全体を下げようとする。
  • ・高音域途中から超高音域では下唇がカップ内に納まっていないと感じるほど薄くなっている。
  • ・舌の位置は高音では持ち上げて口を狭め、低音では下げて口の中を広げる。
  • ・吐息は、高音になればなるほどヒィーヒィーと出し、低音ではハーハーのような感じ。よく言われている「母音あ、え、い」を利用して口中サイズを変更する方法があるが、それをもっと極端にした感じ。慣れと共にやがて丁度良い塩梅に落ち着くはず。

 仮説の通り、唇の合わせ目を移動させる事でマウスピースの円形を利用し弦の長さを変化させることと、息の流速を変化させるために舌を活用することで、全ての音域に対して、最低限の筋力で音を出し続けることが出来そうである。

 口周りの筋肉運動の主な役割はその音程・音量の位置に唇の合わせ目を移動させることである。唇を締めて張力を上げる筋肉運動は従になるので、少ない筋肉でも高音を吹くことが出来るのだろう。小さな音であっても、吹き続ける事が出来れば、やがて必要な筋肉が育ってくるはずだと信じたい。

 今回の実験により、上唇は、「ずらし」ながら音程を変更することを続けることで「変形移動」に進化するらしいという実験結果になった。また、上唇をずらしながら音域を広げていくと、ある程度音域が広がった頃から下唇も意識して移動させる必要があり、意識して下唇を移動させることが出来るようになれば、やがて上下唇共に「変形移動」可能となり、とてもスムーズに任意の音程を出せるのではないだろうか。
 また、マウスピース中央付近に比べ下端付近では、少しの上下移動でも弦の長さは大きく変わるので、慣れるに従い微妙な上下移動で済むようになるのかもしれない。
 さらに、音が出るようになって唇等に筋力が付き、弦の長さ調整を自力で出来るようになれば、カップ内上下移動は少なくて済むのかもしれない。とすると、下端方向に移動することでさらに高音が出ることになり、科学的には無限に出ることになる。

 実は、この実験を始めるきっかけとなった仮説は高音域さえ吹ければ良く、高音域を上昇する方向の音の出し方だけであった。また、上唇の使い方だけしか考えていなかった。そのため、中低音域をどのように吹けばよいのかは全く考えずにスタートした。高音域がそれなりに出るようになり、音を出して十分楽しんだ後で、偶然下唇の使い方を発見し、中低音域まで音域を広げる事ができるようになってきた。この下唇の使い方では、マウスピースをどの程度の出っ張り具合で下唇に”乗せる”ようにすれば効率的なのか、うまく変形するのか、は今後のステップ2の物理的練習次第である。但し、自分の下唇が厚いから”乗せる”ようにする必要があるのかもしれない。
 この時に、唇がマウスピース下端に”徐々に移動”して音程変化するのか、”段階的に移動(弦が2~3本あるような状態)”しているのかは不明ではあるが、広い音域を確保するには下唇が決め手のようだ。

 息の流速については、高音に向かう時には意識して舌を奥のほうから徐々に前のほうまで持ち上げ、さらに前方へ移動し口の中を狭くし、必要なら下顎も動員して、前歯の裏に小さな空間を作る感じにすることで、流量を増やさないように注意しながら、流速を確保する。感覚的に言えば、細く鋭い息にして唇の間を通す感覚で、平たく言えば「ヒィーヒィー」言いながら息を通す感じ。体力的にもヒィーヒィーだが、余裕を見せるふりは大事。但し、徐々に口の中を狭くしているのか、段階的なのかは不明。

 音程を決めている他の要素には、左腕と肺(息の圧力)もあるので、それらとの相乗効果も考慮に含めないと全貌は見えない。しかし、左腕による唇への圧力(プレス)は、音域を広げようとしている小さい音のあいだは、唇とマウスピースとの位置移動を妨げない程度の圧力にとどめたほうが有効だろうし、癖を上書きするにも有利だろうと考える。音量が上がってきたときに腕の使い方がどのように変化するのかは今後の楽しみ。
 本来であれば、ここが次のスタート地点であり、ステップ2物理的練習で吹き込むごとに最適化が図られ、さらに効率的な口の形に変化していくはずではある。

音量の仮説

 音量については実験できなかったが、次のように考えている。
 音程は唇の微細な前後運動一回に掛かる時間だが、音量は唇の微細な前後運動の前後の移動距離。例えば大音量で鳴っているオーディオスピーカを見ると前後に激しく動いているのを見る事が出来る。前後の移動距離が短いと小さな音、前後の移動距離が長いと大きな音。従って、移動距離を稼ぐためには弦を長くすれば可能なので、唇の合わせ目を少し上に移動する。そして、息の流量を増やしてかつ流速を確保するために肺の圧力を上げ、唇の前後移動距離を確保しつつ、長距離移動した唇が同一時間で戻るよう張力を上げる為に、口周りの筋肉により強い力を入れる。どのように力を入れれば可能なのかは、実験してみないと良く分からないが、自分の拙い経験では、出せる最高音から1オクターブ下程度なら自然にそれなりに大きな音になったような気がする。従って、大きな音にしたい音程よりも1オクターブ上の音を小さな音で良いからコントロールできるようになれば、それなりに大きな音になるのではないかと考えている。

 しかし、音量を上げるにはかなりの筋力が必要だろうから、今の自分の優先順位としては中低音域から高音域までがほぼ繋がるようになる事が先で、その後実験に取り掛かってみたい。

音程を決めている体の役割修正

 前掲した「音程を決めている体の部位」のうち、唇については上唇と下唇の役割を分離する。と言うのは、1~2オクターブ程度なら下唇の動きはあまり重要ではないが、広い音域を確保するには下唇の動きと位置がとても重要だろうとの実験結果からである。

  • ・肺:息の圧力を生み出す、音を生み出す唯一のエネルギー源
  • ・舌・口の中の大きさ:息の流速を決める
  • ・上唇:カップ内で上下位置を変形移動させ、低音方向では中央付近に、高音方向では下端方向に移動する
  • ・下唇:上下移動する上唇に従うように位置を自由に変更する
  • ・左腕:楽器を支え、マウスピースと唇との位置関係を保持調節する

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