トランペット高音域への科学的アプローチ実験

付録b

4.実験途中の動画

検証用のデータ。科学的な理屈に従った方法で物理的な音が出ていると思えば聞いていられるが、音楽として聴くには価値はゼロどころかマイナスなので聞くに堪えないものばかりである。
 音が出始めたばかりの頃は、喜んで記録していた。しかし、音がそれなりに出るようになったら、欲が出てきて、もう少しスムーズになったら記録しようとしていたので、記録できずに終了した。
 その為、音が出始めた頃の、何とか出してるぞ感が特に強い動画ばかり。
 時系列で掲示。1~3は実験スタートから7~8か月後の同時期、4はその約1~2か月後。
 ハイベー「付近」との表記は、音感が悪いこともあり、音程が取れないので、気持ち的なもの。

  • 1.ベー付近からローベー付近、べー付近からダブルハイF付近
    息を吸うのもやっとな感じが良く分かる。
    下唇の使い方に気付き始めの頃。
    ベー付近から下がってローベー付近まで。その後、ダブルハイF付近まで上がる。ローベー付近まで下がると、まだ上がっていけないので、ローベー付近を暫く吹かないことにした。
    首筋の血管すごいなあ、肺もこんな感じだったんだろう。これでは体に悪い訳だ。
    (…お湯が沸いたぞ~)
  • 2.口元のアップ。
    第3倍音のF付近からダブルハイベー付近まで。
    マウスピースを下唇に乗せる感じと、上唇をマウスピース下端に寄せようとし、さらに下唇を下側前方へ逃がしているのが分かる。しかし、脳内ではもっと大きく動かしているつもりだったが、実際の動きはかなり小さい。
    タコの真似をするような口にしている「つもり」だが、やはりそうは見えない。
  • 3.欠番 削除20220306 
  • 4.ハイF付近からトリプルハイベー付近。
    ベー管を使用。この音域はどうせ大きな音にはならないのでプラクティスミュート無にしたが、ご近所さんが気持ち悪くならないように、出せる最小限の音量で。上ずっているトリプルハイベーが最後プチュプチュと聞こえるのは、現段階ではマウスピース下端限界で唇の合わせ目がうまく振動できなくなったからだと思う。

5.高音域のアプローチ手順まとめ

 これは実験再開のための覚書。
 この手順の効果は、コツを掴むと高音域以上をいつまででも吹き続けられるが、自分以外に証明されていない。従って、やってみようとする無謀な人はいないと思うが、万が一やってみる無謀な人に備えて一言。
 特に注意すべき点は、高圧にさらされる肺を傷めないよう、吹かない日を多めで、たっぷり休みながらにしてもらいたい。特に、運動不足の人、リターン組、高齢だと思う人、吹いたことのない人。
 自分のように肺が言うことを聞かなくなってしまっては本末転倒である。
 しかし、肺が言うことを利かなくなったのも自分だけなので、別の理由かもしれないが、これは誰も経験しなくて良い事。

 理屈や仮説の詳細は、「理屈と仮説」「実験開始」に詳述しているので、そちらを参照のこと。ここではごく簡単に記述する。

【理屈】

  • 〇この方法をざくっと言えば、マウスピースの直径付近と下端付近との内径の差を利用し、直径付近から下端付近まで、上下唇の合わせ目を唇の立体的な変形を利用しずらすことで少ない筋力で広い音域を獲得しようとする方法であり、息の流速変更には舌を活用。重要なことは2点で、唇の見た目の形ではなく、この理屈通りに唇を動かせる形であればどのような形でも良い事と、マウスピース外に息がもれないようにする事である。実験はハイベーから始めたが、自分の最高音付近の何の音から始めても要領は同じ。

  • ・音のエネルギー源: 唯一のエネルギー源は肺を圧縮する事。肺で生み出された圧縮空気を加工して必要な流速・流量を得る。
  • ・息の流速と流量のコントロール方法: 流量を増やさずに流速を上げるには口の中を狭くする。舌を奥のほうから順に持ち上げるだけでなく前方に移動し、前歯の裏に小さな空間を作る感じ。同一流速で流量を上げるには肺の圧力をさらに上げる。
  • ・弦の長さのコントロール方法: 短くするには、上唇と下唇の合わせ目をマウスピース下端へ移動させ、両端から閉じ、息がマウスピース外へもれないようにする。リムが唇の合わせ目の端を押さえるので唇を閉じる力は思うほど必要とせず、唇の筋肉を動かす主な目的はその音程に唇を位置させる事。中心部分は息が通りやすいように両端よりも緩めに閉じる。
  • ・肺の柔軟性向上は必須項目だが方法は不明: 唇周りの筋肉の負担を最小にしても、高音になればなるほど、音量を上げれば上げるほど、肺へかける圧力を増加させる。つまり、高音&大音量は肺への負担がとても大きい。

☆肺が柔軟性を失った状態を例えていうなら、劣化した風船に空気を入れ、それを手でぐっと握ると破裂してしまうのと同じなので、慎重に。

【手順】

<準備>

  • ・息の流量を最小にして流速を最大に上げられる舌の位置を探す(あー、えー、いー、しぃー、ひぃー)。初めは極端に舌全体を持ち上げてみる。上顎に舌全体が貼りつく程度までを視野に入れ、ひぃーひぃー言えそうな位置を探す。必要そうなら下顎も上下前後に動かして位置を探してみる。初めは極端に、やがて中道になる。
  • ・高音に成るにつれマウスピース下端に移動するので、マウスピース外側へ息がもれぬよう、唇の合わせ目の横幅がカップ内に納まるように唇の両端から閉じる方法を探す。上唇を寄せる感覚が強いかもしれない。
  • ・中心部分を緩めに閉じられるよう、上唇の中心付近を上に持ち上げる筋肉の動かし方を探す。

<マウスピースだけで音を出す>

  • ☆マウスピースだけで音を出すと、一定圧以上のプレスが出来ないので、マウスピースと唇との位置調整が自由に試せる。

  • ・マウスピースのシャンク部分を指先でつまみ、マウスピースの3/4程度が上唇にかかるように上唇からセットし、マウスピースを下唇の上に乗せられるように、下唇を外にめくる感じにしてマウスピースを舐めるように上唇に添わせる。上唇の中心を持ち上げるようにして、唇の両端から閉じる。
  • ・舌全体を持ち上げ前方に移動し歯の裏側に小さな空間を作りヒィーヒィー言うつもりで、自分の限界の高音をノーアタックで出来るだけ小さな音量で出せるマウスピースと唇の位置関係及び、唇への力の入れ方、舌の位置を探す。
  • ・高音になるにつれ、上唇をずらしてマウスピース下端に寄せ、唇の合わせ目の横幅がカップ内に納まるように短くする。唇の合わせ目をマウスピース下端に寄せるのは手でマウスピースを持ち上げるように移動させても良い。下唇が邪魔で下げづらくなったら下唇をマウスピース下側前方に逃がす。
  • ・自分が望む高音(例えばダブルハイF)までマウスピースだけで上がれるようにし、その時のマウスピースと唇との位置関係や角度を体感し、いつでもどの音でも狙って出せる(当てる)ようにする。
  • ・楽器を使用してうまく音が出ない時はすぐにマウスピースだけに戻し、自信を取り戻せるようにしておく。

<楽器使用>(左手の癖付)

  • ・左手の第一の仕事は、マウスピースと唇との位置関係の微調整である。マウスピースだけで出る音程が楽器を持った時に出ない主な理由は、楽器を保持する左手の動きあるいは動かないことにより、唇とマウスピースとの位置関係調整が阻害されるためである。
  • ・楽器で音が出ない時は、マウスピースだけで音を出しながら、注意深く楽器を接続し、楽器の角度等を良く観察する。
  • ・楽器を保持する左手がマウスピースと唇の位置関係を再現できるよう癖が付けばマウスピースだけで出せた音程はコントロール可能な音域になる。
  • ・マウスピースだけだと小さな動きで済むものが、楽器は数倍の長さなので動作が拡大され、大げさな動作になる。

<注意点及び、マウスピースだけ、楽器使用、双方でやってみる事>

  • ・癖が上書きされるまでとても不安定になるので、決してイライラせず、基本動作を繰り返す。
  • ・出来たことを味わう。出来ない事は気にしない。できない理由は1つ、この理屈に合っていないから。
  • ・最初に無駄に力を入れて始めた場合、ある時点で同じように力を入れると音が出にくくなることも有る。この段階まで来たら、今度は力を抜く意識も持つと、力のバランスが取れ楽に音が出る感じになる->リラックス状態に近づいた。
  • ・自信喪失が一番体に悪いので、出来るようになった範囲でとにかく楽しむ。そして、何だか分からなくなったら、途中からでなく、スタートから何度でも始め、「これは出来る、自分スゲー!」と味わう。
  • ・タンギングしない。唇とマウスピースの関係、舌の位置を自覚してからでないと昔の癖が出やすい。
  • ・小さい音で続ける。特に吹けていた音域や低音域を気持ちよく鳴らすと昔の癖が出やすい。
  • ・息ゼロから徐々にゆっくりと息の量を増やしていき、音が出ているか出ていないか程度の音量から始める。
    (これは、発音をよくする方法として、大昔にプロのホルン奏者から何気に教わった方法がヒントになっている。「息をゼロから徐々に増やして入れていくとやがて楽器が唸り始め、やがて音になる。その過程をゆっくりと十分に味わうこと」これをすると、舌を動かすだけで発音がはっきりすると教わった)
  • ・初めから広い音域を獲得する事はとても難しいが、高音域以上でも狭い音域なら何とかなる。高音が出る感覚が分かれば、後でつなげれば広い音域になる。これは、一般的に初心者が中低音域の狭い音域から始めるのと同じ(だが、高音域だけの初心者は需要が無いだろう)。従って、高音域以上でも狭い音域が出るようになった後、つなぐ方法=下唇の使い方に慣れてスムーズに自動化されれば良いだけ。
  • ・具体的には、初めのうちは狭い音域、2度、3度、そしてゴールを5度程度の範囲と設定し、上昇方向だけ音を出し(例えばハイベーからハイF)、次に上下方向。出来るようになったら十分楽しむ。ここまでは特に嫌になるほど時間が掛かった。
  • ・音感の良い人は別として、上昇時、半音ずつとか1音ずつとかでないといけない理由はないので、そのまま出る音を楽しむ。あまり音程に気を取られない。目的は、上昇する際の、唇とマウスピースとの位置関係の発見なので、音程調整などは後回しだが、音感の良い人だと自然に調整しているだろう。その音を含む音域をそれなりに自由に動けるようになれば、後でそれなりに音程調整できる余裕が生まれる。
  • ・高音が引っ掛かり上がらない場合、さらに下端に近づけると上がれる。実験ではハイGで引っ掛かったので、ハイF-ハイGを繰り返しチャレンジした。その後、5度を少しずつ高音方向にシフトする(ハイCからハイG、ハイDからハイA…)。慣れてくれば1オクターブ程度を上昇し、次に上下方向。出来るようになったら十分楽しむ。
  • ・上下方向3往復できれば、癖が付き始めていると考えられるが、油断すると昔の癖が出てきたり、急にダメになったりと、一番危険な時期でもあるので、昔の癖が再現しないかどうか確認の為に、楽譜を置いたり、昔吹いていた環境を再現してみるのも癖の上書きに有効かもしれない。
  • ・今まで吹いていた音域は後回し。高音域以上がある程度出るようになってから、唇の合わせ目をマウスピース中心付近に戻しながら唇への力の入れ方を探すが、昔の癖がゾンビのように蘇り高音へ戻れなくなりやすいので、小さな音で唇とマウスピースの位置関係や動きを確認しながら、少しずつ音域を下方へも広げる。
  • ・出せる最低音からどこまで上がれるか上昇してみる。また最高音から下降して観察する。
  • ・出せるようになった中間点付近から最高音最低音まで下降上昇、上昇下降を試みて観察する。
  • ・たまには、楽器を使用し、昔吹いていた曲を大きくない音で吹いてみる、タンギングもしてみる。そのまま高音域まで上がれるかどうか、どこが引っ掛かるのか観察する。
  • ・広い音域を吹けたほうが楽しいけど、吹きたい音域を吹けた方が楽しいので、吹きたい音域が高音域以上ならコツを掴むまでは高音域以上の狭い音域に限定して吹く、初めはどんな音質であろうとも。狭い音域なら何とかなる。
  • ・イメージが出来るとそれを実現させようと体が自動的に動くものだ。
  • ・音がしょぼいうちに音域を広げまくるのもありだが、その分合奏などはかなり遠退く。
  • ・音が出ないうちは音が出る事が不思議だが、音が出る事が当たり前になると音が出せないことが不思議な事になる。なぜ、音が出ないのか不思議になれば真のゴール。
  • ・今回の実験はフォルテ以上を経験する前に終了してしまったが、徐々に大きな音になりつつあった。昔の拙い経験から、出せる音の1オクターブ下ならそんなに苦労しなくてもそれなりの音量になったので、決して無理せず、自然に任せる。
  • ・もし肺が耐えられればffも夢ではない!と思いたいが、この程度の事で肺が言うことを利かなくなるとは思ってもいなかったので、今回(!?)はあきらめたほうが良いのかもしれない。
  • ・高音域以上を大きな音でガンガン吹けるようになるには、やはり筋肉が鍛えられ、肺の柔軟性・耐圧性を高める必要があるので、欲をかかずに「今の」自分の体力に合った音量で楽しめれば、故障のない、息の長いらっぱライフを送れる…自分はそんなに長くはないだろうけど。(…まだ吹く気でいるのか?)

★高音域以上は肺に掛かる圧力が高いので、良く休むこと。コツをつかむといくらでも長く吹いていられるので、くれぐれも肺を傷めないように注意する事。治るまでに大変な時間がかかるようだし、年齢によっては再起不能になるかもしれない。

<健康の為、高音の吹き過ぎに注意しましょう>

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