トランペット高音域への科学的アプローチ実験

はじめに

自己紹介

(HN:らっぱ吹きの祝日)
 気が付けばもう還暦が近い、何十年ぶりのリターン組。今からピッコロトランペット音域を吹き始めようとするにはもう若くない、と感じるのは気のせいだと信じたい。
 高校で始めた吹奏楽、学生オケ、市民オケと10年程トランペットに親しんだが、ハイD(実音)がやっとで、ハイFはかすりもしなかった。吹いていなかった30代中盤の頃、いたずらしている時ダブルハイFらしき音が蚊の鳴くような音量で出た気がした。しかし、なかなか再現できず断念。口笛ならどうだろうといろいろやってみた結果、あまり聞くことのない音域まで出るようになり口笛で遊んでいた。

 口笛は「楽器」という頼れる道具がなく、口中のサイズや形と息の速度とが科学的に正しければ音が出る。高音域では息の圧力に対抗する舌等の筋力も若干必要だが、慣れてくると高音域でもあまり筋力を必要としない。

 トランペットは楽器という道具なので、道具を活用する方法を科学的に考えアプローチすれば、あまり筋力を必要としない高音の吹き方があるのではないかと考えるようになった。具体的には、マウスピースをどのように唇と組み合わせれば、唇周りの筋力をあまり使わずに高音が出るのか。もし、自分に筋力があれば、例えて言えばベンチプレス100Kg楽々上がる人なら別の方法もあるのだろうが、自分は10Kgがやっとの状態からのスタートなので、筋力を必要としないことが必須条件だった。
 また、とある教会コンサートでピッコロトランペットのコンチェルトを聞いて、やはり人生で一度くらいピッコロトランペットとその音域をどうしても吹いてみたいと思い、始めるなら少しでも若いうち⁉にと思った。

 この年齢になって高音を出す理屈を思いついたこともあり、「やってみてダメなら止めればいい。若い頃でも頑張ってハイベーだったのだから、同じ方法だとハイベーも無理だろう。まともに吹けなくなっても別にいいや。」と思いながら、何十年ぶりにベー管を取り出してみたが、吹く以前に息が吸えない、まっすぐ息が出ない、楽器が重くて持っていられないと三重苦の状態だった。そんな状態で始めたのが、

「中低音をあきらめ、最低限の体力と最低限の筋力で高音が吹ける口」を探す

という、誰も推奨しない方法である。気長に実験してみた結果、今度は偶然ではなく、思いついた理屈に従った方法でダブルハイF超という高音まで出てしまい、ハイベー~ダブルハイF間を思った以上に自由に移動できたので、自分でも驚いて理屈と実験結果を記録することにした。

<注意事項> この実験は、科学的な理屈に基づいたアプローチ手順だと考えているが、検証は音が出たことだけである。従って、考えた理屈通りに、あるいは記載した通りに体が動いているのかどうかは検証していない。

このページでの音程の表記について

 ベー管のハイベーとか、ピッコロのハイベーとか、ややこしいので、ここではベー管を基準にして、音名はピアノの音名で記載(ベー管のドの音=B(ベー))。

音程表記
  • ローベー   :ベー管の第二倍音のベー
  • ベー     :ベー管の第四倍音のベー(合奏時にチューニングで使う音付近)
  • ハイベー   :ベー管の第八倍音のベー
  • ダブルハイベー:ベー管の第十六倍音のベー
  • トリプルハイベー:ベー管の第三十二倍音のベー

  • ローE:ベー管第二倍音から123番ピストンを押下したE(ベー管の最低音)
  • ローF:ベー管第二倍音から13番ピストンを押下したF
  • (F3 :ベー管第三倍音のF)
  • (F6 :ベー管第六倍音のF)
  • ハイF:ベー管の第十二倍音のF
  • ダブルハイF:ベー管の第二十四倍音のF(ダブルハイベーとトリプルハイベーの間)


 一般の音域分けと異なるかもしれないが、ピッコロトランペット音域がターゲットなので、ここでは次のように記述する。

  • 低音域:ベー以下
  • 中音域:ベーからハイベー以下
  • 高音域:ハイベーからダブルハイベー以下
  • 超高音域:ダブルハイベーより上

トランペット演奏への3つのステップ

トランペットを演奏できるようになるには次の3つのステップを踏む。

  • 1.物理的に音を出す=振動(音源)を創る
  • 2.物理的に音程をコントロールする練習=振動数を変化させる(物理的練習)
  •   << 広くて深い溝 >>
  • 3.音楽的な練習(芸術的練習)
――――――――――――

 この3つのステップのうちの初めの2つを科学の範疇、3ステップ目だけを芸術の範疇と考えている。いわゆる楽器と称するもの、例えばピアノや弦楽器等は楽器にとりあえず音源が付いている。したがって、音という物理現象を創る必要は無いのだが、トランペットの音源は楽器には付いてこないので、自身の唇を音源に仕立てる必要がある。従って、音源の物理現象コントロールから始まるので、音程が正確でなくリズム通りでなくても、一曲すべての音を出せるようになるまでには、嫌になるほどの時間を必要とするし、初心者にとっては音の出せない曲ばかりである。
 ここで記載していることは、科学の範疇であるステップ1と2の物理的練習までが対象であり、任意の振動数で唇を振動させる方法を見つけ、特に高音域についてその振動数増減をコントロールする方法を見つける事が出来れば、百点満点である。そして、その高音域をそれっぽくコントロールできる確率が3割程度でも十分であり、5割を超えたら赤飯を炊きたい。

 高音を吹くにあたり、まず初めに、自分の思い込みを、怪しいマジナイ師のように、無理やり上書きすることから始めた。

  • ・ベー管の第八倍音のハイベー付近はごく普通の音域である
  • ・ピッコロトランペットは、実はトランペットとは全く別の楽器であり、ちょっとトランペットをかじったことがあれば、初心者でも遊ぶ方法があるはず。トランペット上級者御用達のイメージなのは、「でたらめ」
  • ・トランペットとピッコロトランペットとで、マウスピースがほぼ同じサイズなのはたまたま偶然

次に、出来なくなるかもしれない事を諦めた。

  • ・正確な音程をはじめ音楽的な向上は才能的にも時間的にも難しく、そしてきちんと鳴らなくても、とりあえずピッコロ音域を吹ければ良い(初級者レベルで十分)
  • ・ベー管の中低音域が吹けなくなっても仕方がない(広い音域をコントロールするのは難しいから)
  • ・中低音域を吹けなくなる確率は高いので、市民オーケストラやバンドに所属してもほぼ出番はなく、団員に迷惑をかけるだけなので、一人で遊ぶ

<このページ専用の用語辞典>

  • 音が出る:音楽的な音ではなく物理的な音の事で、唇が振動し楽器が共鳴すること(類語:吹ける)

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